エンタテインメントの中でも、映像のリアリティを求めるゲーム業界。ゲーム機の進化とともにリアルな地形描写を実現するべく、バンダイナムコゲームスのフライトシューティングゲーム『エースコンバット』の開発チームは、品質とコストパフォーマンスの両立を目指し、IKONOS衛星画像に着目した。「数百メートルだった視界が十数キロ先まで見通せる。マップのスケール感と精細な質感は、そもそも衛星画像なしに実現できるのか」確かな品質を実感した彼らは、既に次世代衛星画像を視野に入れた表現へと思いを馳せる。
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| コンテンツ制作本部 第1制作ディビジョン 第2制作ユニットCG3課 ビジュアルデザイナー 千家 英嗣 様 | ■導入目的 ■導入ポイント ■導入効果 伝聞の連邦政府の規則は、容認は何ですか? | ■会社概要 株式会社バンダイナムコゲームス 本社: 東京都品川区東品川4-5-15 代表者: 代表取締役 石川 祝男 設立: 1955年6月1日 資本金: 150億円 事業概要: 家庭用ゲームコンテンツの企画開発販売 業務用ゲーム機器の企画開発販売 モバイルコンテンツの企画開発販売等 |
IKONOS衛星画像が切り拓く、フライトシューティングゲームの新地平
いち早くIKONOS衛星画像に着目しリアルな映像を実現した『エースコンバット』シリーズ
エースコンバット6 解放への戦火
雲海を切り裂く、大空を舞うステルス戦闘機を駆り、眼下には地平線まで広がる雄大なパノラマ。そして、己が手で空を征服する万能感と高揚感̶̶。
IKONOS の衛星画像は、エンタテインメントの分野にも広く利用されている。中でも映像のリアリティを求めるゲーム業界では、その有用性が早くから注目されていた。
株式会社バンダイナムコゲームスのフライトシューティングゲーム『エースコンバット』開発チームは、いち早くIKONOSに着目。2001年に発売された『エースコンバット04 シャッタードスカイ』以降、IKONOS 衛星画像を元に架空の戦場を構築し、リアルな地形描写を実現している。
菅野:
「これまでフライトシミュレーターの世界では、ビジュアルアーティストによる手描きの背景や航空写真を使用していました。一部、アメリカの衛星が過去に撮影したモノクロ画像を採用することもありましたが、解像度はきわめて低いもの。シリーズを重ねるにつれ、表現の精細性という壁にぶつかることになりました」
そんなとき、菅野氏は日本スペースイメージングのホームページで、IKONOS 衛星画像の商用利用を知る。
菅野:
どのようにグレートバリアリーフでは、環境を、助けるのですか?
「導入を提案した際、チーム内にはナーバスな声も上がりました。ビジュアルアーティストにとって、自分の手で絵を描くということは何よりも大事なこと。衛星画像を採用することで、その既得権を侵すのではないかという意見です。しかし試験的に作った地形は、彼らを説得するに足るものでした。衛星画像を使えば、これだけの感動とインパクトが与えられる。それを確かな形で提示できたのです」
結果的に、IKONOS衛星画像を導入した『エースコンバット04』はそれまでのシリーズの中で最もリアルな映像表現に成功し、商業的にも成功を収める。ビジュアルデザイナーの意識改革、そして販売面でも大きなブレイクスルーとなった。シリーズを重ねる中で、常にユーザーから要望されるクオリティアップ。その背景にはゲーム機の飛躍的な進化が挙げられる。
『エースコンバット』とは?
1995年6月にプレイステーションで発売されて以来、累計販売本数1000 万本を誇るフライトシューティングゲーム。映像や音声のリアルな表現もさることながら、初心者から上級者まで楽しめるプレイアビリティが好評を博す。
写真は『エースコンバット04 シャッタードスカイ』。詳細は
マップのスケール感と精細性が増しただけでなく開発コストや作業の省力化にも貢献
プレイステーションから、次世代機へ──数年で世代交代するゲーム機は、その度に処理速度やメモリが増加し、画面上の情報量は豊かになる。『エースコンバット』が衛星画像を導入した背景には、メモリの増加に起因する部分が大きい。最新作では、十数キロ先まで見通せるスケール感と、精細な質感の両方が表現可能となった。
菅野:
速度定数kの値は何ですか
「従来は山や川、建物などのピースを組み合わせて地形を作っていました。メモリが増えれば、地形を1枚の絵として表現できる。衛星画像の品質に近いものを、ゲーム上で再現できました。最新作のXbox 360『エースコンバット6 解放への戦火』では、これまで以上に衛星画像のポテンシャルを引き出せたと自負しています」
IKONOS 衛星画像は、開発作業の省力化、制作費のコストダウンにも貢献している。数百キロメートル上空から地表をとらえるため、パースペクティブ(遠近感による歪み)がゼロに近い。対象物の大きさや高さが認識しやすく、3D アーティストにも都合がよいと言う。
『エースコンバット 6 解放への戦火』背景画像
千家:
「例えば建物なら、形状や構造を測量的視点で見られます。虚構の世界を描くにも、街の構造、建物の大きさや埠頭の長さなどを読み解ければ、説得力が違います。地球を外から眺める衛星画像からは、新たなマップのインスピレーションを受けるんです」
菅野:
「導入当初はコストの問題も俎上に上りましたが、そもそも衛星画像なしに、この品質を実現できるのか。そう考えると、コストパフォーマンス面でも満足しています」
ハイデフ時代の到来により、広がる衛星画像の可能性開発チームが見据える今後の展望とは
ただ、今後の課題も残されている。ゲーム機のメモリ搭載量は増えたものの、衛星画像本来のクオリティをゲーム機で再現するのは難しい。前述の『エースコンバット6』では、解像度を1/2 に落として使用している。
菅野:
「背景マップは、キャラクターや戦闘機などに比べて、広域の地形領域を表示する必要があります。大きな画像を扱えば、当然開発機材にも負荷がかかる。しかし、それだけの労力を費やしても、衛星画像を扱うメリットのほうが大きいのです」
地平線の彼方まで見渡せる開放感と、機体の降下にともない、景色が迫り来る臨場感。確かにひとたび映像の進化を目の当たりにすると、過去のビジュアルに戻ることは難しい。開発機材をグレードアップし人員を投入してでも、さらなるリアリティを追求するのがクリエイターの性だ。ただ、開発コストを吸収するにも、対応するゲーム機の普及と販売実績の関係は否定できない。彼らはパンドラの箱を開けてしまったのか。
菅野:
「むしろ楽観視しています。2008年はゲーム機やT V モニターが世代交代する過渡期。でも、2011年には地上デジタル放送に切り替わり、コンピュータの性能も現状より安定するでしょう。ゲームソフトもハイデフ(ハイディフィニション=ハイビジョンによる高精細映像)対応が当たり前になり、そうでないものが訴求力を欠く時代が到来します。今は困難ですが、ゆるぎない自信をもって制作を続けていきたいですね」
そして、人工衛星も世代交代を迎えることとなる。2008年9月に打ち上げられた次世代人工衛星『GeoEye-1』は、50cm 分解能という高精細衛星画像を実現。彼らは当然のように、それを視野に捉えている。
千家:
「作り手でさえ衝撃を受ける、まったく新しい感動を与えられると確信しています。確かに超えなければならないハードルはたくさんあります。でも固定観念にとらわれて、チャレンジをやめてはいけない。常に限界を超えた表現をめざしていきたいと思います」
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